産科・産婦人科にかかるのには、どの様に選んでおりますでしょうか?
≪産科・産婦人科の選び方のポイント≫
- 産科・産婦人科・婦人科の違いは?診療科目が似てるけど違うの?
- 通いやすい距離は?
1)仕事帰りに通いやすい?
2)駅から近い?駐車場は?
3)陣痛が来てすぐに着く? - 女医・小児科医などスタッフ体制は?
1)女性医師(女医)はいるかな?
2)助産師外来や院内助産院の有無で病院を選ぶ
3)小児科医が在籍している病院を選ぶ - 産科・産婦人科の施設は?
1)ゆったり個室、みんなで大部屋?
2)立ち合い分娩や家族の宿泊
3)母児同室・別室?母乳・ミルク・混合と育児方法も確認!
4)産前産後の各種教室やケアの有無で選ぶ - 医療面の体制について
1)スタッフ配置は足りている?
2)自分なりの出産のバースプラン - 出産費用は施設によって違うの?
1)地域別の分娩費用
2)帝王切開は健康保険の対象!
3)無痛分娩は別料金
4)出産育児一時金直接支払い制度 - まとめ
1. 産科・産婦人科・婦人科の違いは?
1) 診療科目が似てるけど違うの?
〇産科
産科は、妊婦や出産・産後を主に診療する診療科目です。入院機能を持っていることが多く、分娩・出産に対応可能な施設が多いです。
〇婦人科
婦人科は、女性特有の疾患を診ており、月経やおりものの悩み、子宮・卵巣の病気、性感染症、更年期障害、思春期外来、避妊、中絶、不妊の相談や治療などの女性の幅広い相談・診療をする診療科目です。単体の標榜の場合、分娩・出産には対応していないことが多いですが、妊婦検診までは対応しているケースがあります。
〇産婦人科
産婦人科は、産科と婦人科の両方を診療する診療科目です。しかしながら産婦人科は、妊婦健診までは対応していても出産に対応していない医療機関もありますので、出産を行っているかはホームページなど、医療機関にご確認下さい。
2. 通いやすい距離はポイント
1) 仕事帰りに通いやすい?
<受診頻度>
・妊娠初期~23週 :4週間に1度
・24週~35週 :2週間に1度
・36週以降 :1週間に1度
と妊娠週数が上がるにつれて、徐々に通院回数が増えます。もちろん異常があれば更に通院回数は増え、 妊婦健診の受診のしやすさ、何かあったらすぐに受診できる場所にあるかなどがポイントとなります。
2)駅から近い?駐車場は?
駅から産科・産婦人科までの移動距離も重要なポイントです。自宅近くの産科・産婦人科であれば妊婦健診時には徒歩で移動できますが、公共交通機関を使われている方は駅やバス停から近いかもチェックする必要があります。何度も妊婦検診を通うことになりますので、お腹が大きくなると歩く時間もかかるため徒歩距離が長いとかえって往復時間がかかるようになります。また車で通う方は、駐車場が十分に確保されているかもポイントです。駐車場が少なく、近隣に駐車しなくてはならないと別に駐車料金がかかったりするため、車で通えるかもしっかり確認しましょう!以外にバスだと通いやすいという場合もあるので、もし気になる産科・産婦人科があった場合は、交通ルールを調べるのもよいです!
3)陣痛が来てすぐに着く?
妊娠期間は約10ヶ月あり、それを経て出産となります。出産にあたり、初めての出産か、2回目以降の出産かで、陣痛から出産までの時間が変わります。
<陣痛から出産までの時間>
・初めての出産(初産婦) :約10~12時間
・2回目以降の出産(経産婦) :約4~6時間
時間には個人差がありますが、概ね初産婦と経産婦で倍以上の時間差があります。経産婦の方には、陣痛に気付いてから約1時間で出産となる方もおり、特に自宅から産科・産婦人科に出来るだけ近い方が安全と言えます。また陣痛の痛みは人それぞれで、痛みに気づかない人もいますし、前駆陣痛で我慢出来ずに入院する方もいます。よく経産婦の方には、概ね30分以内で産科・産婦人科に到着することができるのが望ましいといわれています。入院時に、旦那様やご家族が自宅にいない時間帯に陣痛が始まっても、自分で移動出来る距離の産科・産婦人科を選ぶのがポイントです。因みに最近では陣痛タクシーもあり、陣痛時にタクシーで産科・産婦人科に向かうことができる地域もあります。加藤クリニックでは、妊婦検診時や陣痛時にタクシーを利用できる出産プランもご用意しておりますので、ご興味のある方は是非ご確認ください。
3.女医・小児科医などスタッフ体制は?
1)女性医師(女医)はいるかな?
女医さんがいるかどうかは、ホームページで確認してかかるのが良いと思います。ホームページでわからない場合は、電話で確認するのもよいと思います。
2)助産師外来や院内助産院の有無で病院を選ぶ
助産師外来とは、助産師が行う出産前の健診、相談です。助産師外来では産婦人科医には聞きにくいような些細な相談や悩みなどを相談することができます。助産師外来という枠を設けているところや、特別な枠は設けなくても助産師が週数に応じて説明する時間があったりするところもあれば、助産師が外来にいない施設もあります。助産師に相談ができる産科・産婦人科かは、是非事前にご確認頂ければと思います。
また大きい病院などには、院内助産院がある場合があります。院内助産院とは、病院の中で助産院のようなシステムを取り入れていることで、出産の管理を主に助産師だけで行なっています。ただし出産時にもし異常が起きれば産婦人科医が、出産後赤ちゃんに異常があれば小児科医が対応(小児科医がいる医療機関のみです)するため、安全性を備えた助産院と病院の両方のよさを兼ねシステムです。院内助産院はかなり大きな病院でしか取り入れられていないことが多く、詳細は医療機関にご確認下さい。
3)小児科医が在籍している病院を選ぶ
もちろん小児科医のいない病院でも、赤ちゃんに異常があったらすぐに小児科医のいる総合病院に搬送する連携がとられています。
また小児科医がいる産科・産婦人科では、1ヶ月健診で産婦人科医だけでなく小児科医にも赤ちゃんを見てもらえるというメリットがあります。小児科医がいない医療機関においては産婦人科医が小児科を診るところがありますが、予防接種や子供の診察においては小児科医が専門となるため小児科医がいるかどうかも判断のポイントとなります。
4.産科・産婦人科の施設は?
1)ゆったり個室、みんなで大部屋?
ホテルのような綺麗なところで産みたい、リラックスしたいという方は、ホームページや院内の資料などを見て判断するのが良いと思います(最近はコロナでどこも見学ができなくなっており、見学できるようになったら是非見学して決めるのもよいと思います)。
また多床室でもいいから複数診療科のある総合病院で出産をしたいという方は、総合病院などを選ぶのが良いでしょう。ただし地域の救急診療を行っている総合病院や大学病院においては、重症な患者さんや合併症を抱えていて患者さんを主として診ているため、受診可能かは直接医療機関にご相談下さい。
2)立ち合い分娩や家族の宿泊
コロナウイルス蔓延前は、立ち合い分娩を行っている所は多かったですが、コロナウイルス蔓延以降は制限がかかっている産科・産婦人科も多いです。出産時に撮影はOKか?子供の立ち合いはOKか?など、産科・産婦人科によって判断が異なるので、事前に確認することをお勧めいたします。また家族の宿泊については、制限している医療機関がいまだ多い状況かと思います。ただ徐々に一定の制限の元1日だけ宿泊を認めている医療機関も出てきておりますので、産後の入院期間中に家族でゆったり過ごすことができるのかも事前にご確認いただくのが良いと思います。
3)母児同室・別室?母乳・ミルク・混合と育児方法も確認!
出産後の重要な視点として、『母児同室』か『母児別室』かがあります。『母児同室』とは、お母さんと赤ちゃんが同じ部屋でずっと一緒に過ごすことです。逆に赤ちゃんは新生児室に預けて授乳や面会のタイミングでお母さんが新生児室まで赤ちゃんを迎えにいくのが、『母児別室』といいます。
産後は完全母乳で育てたいと思っているお母さんにおすすめなのは、母児同室です。母乳を出すためには赤ちゃんが欲しがるたびにおっぱいを吸わせることが重要だからです。授乳のたびに新生児室まで歩かなくて良いため体力的に母児同室がいいと言われる方もいます。逆にミルク育児や混合授乳を希望しており、お産で疲弊した身体を入院中にゆっくり回復させたい方は母児別室がいいです。医療機関によっては完全母子同室だったり、両方相談におじるところがありますので、どちらが良いかは気になったらご確認されるとよいです。
4)産前産後の各種教室やケアの有無で選ぶ
基本的にどの病院を選択しても妊娠後期の両親学級(出産前の準備のお話など)は必須なことが多いですが、妊娠初期や中期の両親学級、マタニティヨガクラス、骨盤ケア、鍼灸などは、その施設によって色々な種類のクラスがあります。ご希望のプログラムがある病院を選ぶのもひとつの選択肢になりますね。中には両親学級以外行っていない医療機関もありますので、教室も楽しみにしている方は是非事前にご確認してください。
5.医療面の体制について
1)スタッフ配置は足りている?
2)自分なりの出産のバースプラン
◦分娩スタイルの種類
・仰臥位分娩
仰臥位分娩とは、分娩台の上で足を開いて上向きで出産をする一般的な分娩方法です。仰臥位分娩は助産師や医師が援助しやすい姿勢なため、緊急時に医療介入しやすいというメリットがあります。デメリットは、自由な姿勢で出産できないため、いきみにくいなどです。
・フリースタイル分娩
分娩台に拘束されることなく、自由な自分のしたい姿勢(フリースタイル)でお産をする方法です。痛みがある時に、自分が痛みを感じにくい姿勢に変えたりすることができ、旦那さんにも積極的に介入してもらったりできるため、よりリラックスして出産に挑むことができます。デメリットは医療介入しにくい姿勢のため、緊急時には分娩台に登っていただく必要があったり、部屋の移動が必要になったりします。
・水中分娩
温水の中で出産をする方法です。温水がお母さんの緊張をほぐし、体を温めるため出産が進みやすくリラックス効果があります。デメリットとしては感染が危惧されることです。仰臥位分娩よりも感染リスクが高いことがわかっており、今現在は日本では水中分娩ができる施設がかなり少ない状況です。
・ソフロロジー分娩
ヨガの瞑想を取り入れた分娩方法で、事前に分娩時の呼吸法とイメージトレーニングを積み、出産当日はゆっくり深呼吸しながらできるだけいきまずに出産をする方法です。イメージトレーニングを積んでいるため、当日にリラックスできたり、精神的に落ち着いて出産できるために痛みが軽減する効果があります。デメリットは、せっかく妊娠後期からトレーニングをしていても陣痛が始まるとパニックになってしまい、思うようにいかない方もいるため、結果思うようなお産にならないケースもあります。
・自宅出産
ご自宅で出産をする方法です。慣れ親しんだ場所で出産できるため、緊張せずに家族みんなでお産に挑むことがきます。医療機関が自宅出産をフォローしている所は殆どなく、助産院にてサポートしてもらいながらの出産になります。デメリットとしては緊急時にすぐに病院にかかることができないため、安全性が低いことです。
・LDR出産
LDRとは、Labor(陣痛)、Delivery(分娩)、Recovery(回復)を略した言葉です。言葉の通り、陣痛から分娩、産後2時間位の回復を1つの部屋の中で行うことで、移動の必要がなく完全個室でプライバシーのある出産ができる方法です。日本で最も多いシステムですが、海外のように退院時までLDRにいるという医療機関は少なく、産後の安定化されたら病室に移動するケースが多いです。
・無痛分娩(和痛分娩)
麻酔を使って陣痛の痛みを軽減することで、陣痛に恐怖感がある方や心疾患や脳疾患がある方なども医学適応で無痛分娩を選択することもあります。現在は、無痛分娩というと第一選択方法が硬膜外麻酔で、下半身だけの痛みをとる方法です。硬膜外麻酔は、鎮痛効果が強く、お母さんの意識ははっきりしており呼吸にも影響は受けず、赤ちゃんへの影響もほとんどありません。デメリットとしては、処置や管理がやや難しかったり、吸引分娩のリスクが高かったり、帝王切開になるリスクが高いことなどが挙げられます。
6.出産費用は施設によって違うの?
出産は病気ではないため、基本的には健康保険の対象外です。そのため、妊娠出産にかかる費用は自己負担になります。国の保証で出産育児金や妊婦健診時に使用できる妊婦健診受診票などの制度があります。妊婦検診での内容は、日本産婦人科医会にて定められている内容もありますが、医療機関によって内容は異なります。また自治体の妊婦検診受診票もサポートしている回数に違いがあり、自治体によってもサポート内容は異なっております。医療機関においても、対応設備やサポート方法が異なるため、すべての料金は医療機関ごとに異なっています。一概に出産費だけでは比較できない部分もあり、入院期間、サービス内容や体制なども踏まえて確認いただくのが良いと思います。
1)地域別の分娩費用
分娩にかかる費用はその地域によって全然違います。一般的に助成される出産育児一時金は42万円ですが、平成28年の調査では全国平均で50万円程度と自己負担をしていることが多いです。最も平均値の高い東京都の場合は62万円程度が相場のため、手出しで20万円程度あります。逆に最も低い平均値が鳥取県で、40万円程度のため手出しが無く済むようです。埼玉の分娩にかかる費用の平均は、約53万円です。この数字を軸に、分娩費とサービス内容をチェックしましょう。
◦正常分娩分の平均的な出産費用(関東地域)
地域 都道府県 | 平均値 |
---|---|
全国平均 | 505,759円 |
茨城県 | 520,995円 |
栃木県 | 543,457円 |
群馬県 | 510,156円 |
埼玉県 | 531,609円 |
千葉県 | 512,087円 |
東京都 | 621,814円 |
神奈川県 | 564,174円 |
◦項目別正常分娩分の平均的出産費用
項目 | 平均値 |
---|---|
入院日数 | 6日 |
入院料 | 112,726円 |
室料差額 | 16,580円 |
分娩料 | 254,180円 |
新生児管理保育料 | 50,621円 |
検査・薬剤料 | 13,124円 |
処置・手当料 | 14,563円 |
産科医療補償制度 | 15,881円 |
その他 | 28,085円 |
※出典:出展:公益社団法人 国民健康保険中央会 平成28年度「出産費用」より
2)帝王切開は健康保険の対象!
正常分娩の場合は健康保険が対象外のため自費となりますが、帝王切開は健康保険が適用されるため一般的に自己負担は3割負担となります。一般的に帝王切開で出産したほうが入院期間が長く、退院時の総分娩費用は高いですが、高額療養費制度が使えること、民間の医療保険の手当がもらえたりと実費は結果的に少なかったという方も多いようです。帝王切開は今や5人に1人の確率になりますので、妊娠前に民間の医療保険に入ることもひとつの出産準備となります。
3)無痛分娩は別料金
無痛分娩は基本的には実費です。価格は医療機関によって異なりますが、通常の分娩費用にプラス10~15万円が多いです。しかし無痛分娩は異常分娩(吸引分娩など)になるリスクもあるため、異常分娩になった場合にはその分においては保険適応をすることはできます。
4)出産育児一時金直接支払い制度
出産育児一時金直接支払い制度とは、医療保険者から医療機関へ出産育児一時金の支払いが直接的に行われるため、医療保険者は分娩費用の全額から42万円を差し引いた金額を医療機関に支払う制度です。この制度を使うことであらかじめ多額の出産費用を用意する必要がなくなります。ほとんどの医療機関が直接支払い制度を導入していますが、制度導入しているかは直接医療機関医ご確認頂ければと思います。