赤ちゃんの出生後、出産や子育てに関する様々な事務手続きが必要になります。
出産後の手続きは、出生後2週間以内を期限とするものも多いです。しかし、ママの入院中や退院直後は慣れない赤ちゃんのお世話やママの体調が安定しないことなどもあり、バタバタと忙しくなりがちです。ご家族で協力して準備を進めていきましょう。
このあと、主に産後にかかる手続きについてお話していきますが、産前にも関係する手続きが一部ございます。
ほぼ全員が行う手続き
ほぼすべての方が行う手続きとしては、出生にかかる自治体への手続きと、健康保険への加入手続きがあります。
期限に注意しながら、速やかに手続きを行いましょう。
※各手続きの種類をクリックすると説明にジャンプします
種類 | 期限 | 手続き先 |
---|---|---|
出生届及び出生証明証 | 出産日を含め14日以内 | 各自治体 |
出生連絡票 | 出生後7~14日以内 ※自治体による |
各自治体 |
乳幼児医療費助成 | 1か月健診まで | 各自治体 |
児童手当 | 出生月の月末、または出生の翌日から15日以内 | 各自治体 |
健康保険証 | 出生後速やかに | 社保、国保組合:勤務先 市町村国保:各自治体 |
出産育児一時金 | 支払い方法による | 直接支払い制度:産院 産後申請方式:健康保険組合 |
出産・子育て応援事業 | 自治体による | 各自治体 |
出生届の半分が出生証明証になっており、クリニックで作成します。
提出の際は、母子手帳と届出人のハンコ(スタンプ印不可)などが必要です。お持ち物は各自治体のウェブサイトなどでご確認ください。
■出生連絡票
母子手帳の発行と一緒に発行されるはがきです。低出生体重児の届け出と兼ねていることが多いです。助産師や保健師による訪問を希望するかの確認を付けて提出します。はがきは産後のサポートのほか、乳幼児健診や予防接種のお知らせにも活用されます。
■乳幼児医療費助成
乳幼児医療費助成は子どもの医療費助成を受けるための届け出です(名称は自治体によって異なることがあります)。医療証を医療機関の窓口に提出すると、子どもの医療費の保険適用分が無料~減額されます。助成対象の年齢や金額は自治体によって異なります。
申請の際は、子どもの健康保険証、届出人のマイナンバー(番号がわかるもの)、判子(スタンプ印不可)などが必要です。お持ち物は各自治体のウェブサイトなどでご確認ください。
■児童手当
児童手当は、0歳から中学卒業前までの子どもを育てる家庭に助成されるものです。ただし、所得制限があり、場合によっては支給されないこともあります。申請が遅れてもさかのぼって支給はされません。原則として出生月の月末までの申請とされていますが、月の後半に出生した場合は出生15日以内に手続きをしましょう。申請書、判子(スタンプ印不可)、銀行口座番号、マイナンバーなどが必要です。お持ち物は各自治体のウェブサイトなどでご確認ください。
■健康保険証
赤ちゃんの健康保険証は早めに準備できていると安心です。社会保険の場合は扶養する親の勤め先の窓口となる部署で手続きします。国民健康保険の場合は自治体で手続きします。
申請書、扶養者(申請者)の保険証、マイナンバー、母子手帳などが必要になることがあります。勤め先の窓口や自治体でご確認ください。発行には2週間程度かかります。4月など節目となる繁忙期は1か月以上かかる場合もあるので、早めに手続きしましょう。
■出産育児一時金
分娩にかかる費用の一部を国や保険者から助成する仕組みです。当院のブログで詳しくお話しています。
(参考リンク)
出産育児一時金について(加藤クリニックブログ)
■出産・子育て応援事業
令和4年度第2次補正予算で計上されたもので、妊娠時と出産時にそれぞれ5万円相当ずつ支給される事業です。令和5年1月1日以降、順次各自治体でスタートしました。
申請の条件として、妊娠・出生時の面談、アンケートの実施などが必要です。また、自治体によって申請の期限がございます。こちらも併せてご確認ください。
(参考リンク)
出産子育て応援事業(加藤クリニックブログ)
パパママ応援ギフト(出産・子育て応援給付金)について(さいたま市)
会社員の方が行う手続き
企業等へお勤めの方が行う手続きは、産前産後休暇、育児休業に関する手続きです。
各企業の担当部署を通して保険組合などに手続きするかと思いますので、担当の方へ早めに手続きを確認しておきましょう。
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種類 | 期限 | 手続き先 |
---|---|---|
出産手当金 | 産休開始翌日~2年以内 | 勤め先 |
育児休業給付金 | 育児休業開始から4か月以内 | 勤め先 |
■出産手当金
出産手当金とは、産前6週間(双子以上は14週間)から産後8週間の範囲で、給与の支払いがない期間の経済支援として、社会保険組合等から支払われるものです。
無給期間に対し、標準報酬月額を日割りしたものの2/3を目安に支給されます。健康保険料や厚生年金は事業主が届け出ることにより、免除されます。出産を機に退職した場合でも、条件を満たせば在職時の健康保険組合等から出産手当金が支払われます。支給金額や要件などの詳細は勤め先の窓口となる部署に確認してください。
(参考リンク)
全国健康保険協会 出産手当金について
■育児休業給付金
育児休業給付金とは、産後8週間を超えて原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した場合、一定の要件を満たすことで雇用保険から支給される給付金です。
22年の法改正で、父母が交代しながら育児休業を取るなど様々な取得方法が可能になり、支給対象期間も増えました。支給額は標準報酬月額を日割りしたものの2/3が目安です。育休の取り方、給付金の支給対象期間と金額などの詳細はリンク先または勤め先の窓口となる部署で確認してください。
(参考リンク)
厚生労働省 育児休業給付とは
厚生労働省 Q&A~育児休業給付~
医療費に関する手続き(必要な方)
その方の所得等に応じて、1か月または1年で一定以上の金額の医療費を払う場合に、超えた分の金額に対し補助が受けられるものです。
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種類 | 対象 | 期限 | 手続き先 |
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高額療養費の助成 | 医療費が高額になった人(保険適用分) | 診察日の翌月~2年の間 | 社会保険協会、国保組合、自治体 |
医療費控除 | 医療費が一定額を超えた人(出産育児一時金等の支給額を差し引いた金額) | 確定申告時 | 税務署 |
■高額療養費
高額療養費制度とは、1か月(1日から末日まで)の医療機関や薬局で支払う金額が、一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、その分の金額が後から支給される制度です。自己負担限度額は年齢や所得、直近1年間で高額療養費の支給を受けた回数に応じて定められています。また、保険適用の部分のみ対象となるので注意が必要です(自費の医療費、差額ベッド代などは対象外です)。
医療費が高額になることが予め分かっている場合には、事前に申請して「限度額適用認定証」を取得し、医療機関や薬局の窓口で提示するとスムーズです。
(参考リンク)
さいたま市高額療養費支給制度
全国健康保険協会 高額な医療費を支払ったとき
■医療費控除
医療費控除とは、1月1日から12月31日までの1年間で、自分や家族のために一定の金額以上の医療費を支払った場合に確定申告をすると、所得控除を受けることができるものです。医療費控除の対象となるものは保険適用外の医療費等も含まれます。ただし、出産育児一時金や高額療養費などの支給を受けた分は差し引かれますので注意が必要です。妊娠中から出産までの医療費等の領収書はまとめておきましょう。
(参考リンク)
国税庁 医療費を支払った時
国税庁 医療費控除の対象となる出産費用の具体例
支援が必要な方
出産に関する主な手続きと給付金について解説してきました。他にも、特定の疾患があるお子様との生活やひとり親世帯等の生活をサポートするための制度などがあり、自治体などに申請することによって給付金を受け取れます。
- 未熟児養育医療給付金
- 児童扶養手当
- ひとり親家庭等医療費支給
- 結核児童療育給付
- 小児慢性特定疾患医療給付
- 指定難病医療給付
- 産科医療補償制度
また、厚生労働省は、妊娠から出産まですべての妊産婦に対して支援する体制確保を目指し、各自治体の子育て支援センターなどを拠点にサポートを提供しています。子育てをしていく中で困ったことがある、同じように子育てを頑張る仲間と交流したい、といった場合には各自治体の子育て支援センターに該当する施設を頼ってみるのもいいと思います。
もちろん、当院でも産後のお母さんたちのサポートをしていきます。母親学級やケア、産後ケア事業の利用もお待ちしております。また、お困りごとなどがありましたら看護スタッフにご相談ください。
(2023/03/29)